光文社新書、著者の城繁幸さんは富士通の人事部でいろいろな人の採用、その他の仕事をしてきた当事者で2004年退社し、その後「内側から見た富士通成果主義の崩壊」(光文社ペーパーバックス)が大ブレイクし有名になられた方です。
その本の要旨をいえば成果主義によって人間関係が崩壊したり、結果、サラリーマン全体の給料が下がっただけで会社にとって何らいいことがなかったという内容だと思います。私自身、社外役員として他の会社でコンプライアンスだとか、内部統制だとか、ガバナンス、よくある成果主義の査定などなど。あまり自分自身、効果のないどころか横文字が乱舞する世界には誰が損し誰が得をするのか見極めないと日本の会社が総崩れになるのではないかという危惧を持っていたのでこの本はそのような日本社会の会社の問題を非常にわかりやすく解説しているので特に今後、社会の犠牲者になるであろう若者達や40歳未満の人々に読んで欲しい本です。年功序列が人に優しいのか?成果主義が悪いのか。この二つは別々の選択でない。どちらにしても日本の社会は年功序列がすでに崩れていて、10年先どころか5年先も自分のいる一部上場企業の会社であっても上級公務員試験を通って入った霞ヶ関であってもどちらもうまみがないということをわかりやすく書いています。つまり、学歴をつけ一流企業に入り、入ったところから退職するまで、そして退職したあとも何らかのよきポジションを下請け会社、その他でうけ、悠々自適に給料をもらい続けるシステムはもう終わっているのだよ。と事例を挙げながらしっかり書き込んでいます。
結局、今の日本の社会は大企業も中小企業も恐竜時代のように強いものが弱いものを食い尽くしていく弱肉強食時代に入っているので、5年先すら読めないという彼の話は説得力があります。そして、実際、東大生はもはや外資系の給料が数千万円もらえるような金融会社を中心にして就職する人が多く、官僚が若者に人気を失ってしまった時代になったということです。私の周りを見渡してもその犠牲者になっているのが40代前後からの若い人たちです。大手デパート会社に勤めていた甥っ子は入社当初から優秀だったけれども、慶応閥の会社の中で異端児で出世の道が閉ざされているとみると入った当初から感じていました。会社内にある慶応出身者の会にも「あれ?君も行くんでしょ?」とごく当然のことのように言われながら、「いえ、ボクは違う大学ですから」と答えるつらさをずっと20年以上こらえてもデパートの給料は外から見たら信じられないほど安く、そのうえデパートの商品ですべてを買い整えなければ人間ではないというムード。しかも出世するやつは結婚のエンゲージリングが100万~200万円するものをちゃんと買わないとだめなやつと噂が飛ぶのだとか。50を前に彼は会社を辞め、親戚がやっている小さいけれど、業績のよい会社に転職しました。別のお友達の子供はアメリカで国際弁護士を目指していたのだけれどうまくいかなかったので、東大卒だけど中途採用であちこち入社試験を受けました。しかし、全部アウト。この本の中でもかかれていますが、実は東大ブランドが通用するのは最初の会社の入社の時だけ。一身上の都合で会社を退社と書いたあかつきには、ブランドのあるところには入社できないのは一流企業の人事部の常識。しかし、親や本人や塾の先生はそんなことは知らないので東大ブランドさえあればこの世は一生春のまんま。と教え続けているけれど実はそうでもないらしい。また別の友達の子供は地方公務員を30倍の倍率で合格し、めでたく公務員の仕事をやっていますが、手取り14万円。そのお金で暮らしを立てつつ、貯金をしなければならない。この金額はよく考えると「年収300万以下の時代が来る」と予想した森永卓郎さんの予想を地のままで生きているのには驚きました。しかも、年に給料は3000円しか上がらないといい、それなら10年たったら給料は3万円上がるだけ。今もらってる給料税込み20万が23万円に上がるだけという計算になります。
今日の新聞に出ていましたが、60カ国の調査で若者が起業するパワーを持っている人たちが多い国、少ない国というランキングをつけたところ、日本人は昨年度はビリ。今年は59位だそうです。子供の頃から寄らば大樹のような教育を旨として生きてきた日本ですが、そろそろ日本社会がどこにも安定するポジションがなくなったのですからボーイズビーアンビシャスの別の教育をするところがドシドシ出てこないと大変だとつくづく思います。
私の高校時代の友人に昨日会いましたが、彼が大学を卒業して一番人気だったところが鉄鋼石油関連だったそうで、そこに華々しく入社した彼の友人達はその後、40代でほぼ下請け会社にとばされたりリストラにあったりとさんざんな目にあったとか。一番人気の会社はその後衰退しかないので当然といえば当然でしょう。これは株と同じなのでしょうか。その友人が退職を迎え、年金を払いたくない国家が60歳以上の団塊世代をなんとか年金を払う側の対象からもっともっと長い間、年金を支払う側にすり替えるために雇用期間を長引かせていると言ってました。ほとんど人は月給が半分になってもまた従来の部下に頭をペコペコ下げる役職に落とされてもそこにしがみつき続けるのだと言っていました。彼は別の道を行くのだと答えていましたが。厳しい日本の時代。若い人も若くない人もたくさんの情報を集め、過去の常識に従った行動はもはや通用しない時代になったことをしっかりと見据えて自分の人生を自分で描くような生き方をしたいものです。そんな意味でこの本をぜひお薦めします。