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ビジネスとしてのストリートパフォーマー

 北京に先月行った時の思い出話をもうひとつ。北京では車の渋滞がひどいといわれるように、車の渋滞はラッシュ時になると万里の長城からホテルまで帰ってくるのに三時間もかかったことで実感しました。しかし、街にあふれている車ではベンツよりアウディの大型車が多く、「本当に金持ちが多いんだな」というのを実感したものでした。

 北京の友人に聞いたところ、中国人のお金持ちの人というのはこれ見よがしに自分が人に対して優越感を持っていることを示すのが好きな人が多い。だから、車も最高級そして食べるなら高級寿司、それで一流ホテルの高い寿司を食べるのが今、とても流行っているのだとか。その流れで日本のあきたこまちなどのブランド米が日本の10倍で中国で売れるようになっているのだそうです。私がグランドハイアットホテルの一階のバーに行ったところ、そこのおつまみの主流はやはりお寿司と天ぷら、けれども日本酒を飲んでいるわけでなくそこに出ているお酒はビールかワイン、そしてウィスキーやブランデーなのでこうしたスノッブな雰囲気を成功者達が楽しむのがトレンディなのだということがよくわかりました。お寿司とワインの組み合わせで一人6、7千円かかったところから見ると相当値の張るワインバーだったかもしれません。

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 北京の大通りにはアウディだけ取り扱うディーラーがヴィトンやドルチェアンドガッバーナと同じ並びに店を構えているのが印象的で、しかも、そのお店で車を見繕っているのがなんと20代、30代の男女。これはIT長者なのかそれとも高級官僚の子供達なのかとガラス越しに彼らの顔を見てしまいました。

 ところで、そのアウディのちょうど前によく言えば、ストリートパフォーマーが夜の9時過ぎに笛を奏でていました。ちょうどその夜は中秋の名月で中国人達がその夜、月餅を買ってきて家族や友人達が月を愛でながら食べるのが習慣だという日でした。月餅の入った紙袋を何袋も買って、帰る人たちの姿を大勢見かけました。

 夜7時くらいにはもっと人通りの多いところで演奏していたその40代くらいの目の見えない演奏者は満月の下でもの悲しく笛を演奏する姿がなんともいえず、美しかったのです。しかも、その人の前には2、3歳の小さな男の子がチョコンと座り、ゆでたおいものようなものを食べていました。

 その同じ親子が場所を変え、アウディの店の真ん前で演奏していたのです。子供はその時、すでに眠っていました。私は前の日にも同じその子供を繁華街の道で見かけたのを覚えていて、とても不思議な気がしました。その時の連れは目の見えないおじいさんで胡弓を弾いていました。その2、3歳の男の子はその時もおじいちゃんの前に座って何かを食べていました。胡弓の音も悲しげでここでお金をあげないとこのおじいちゃんと子供はきっと大変なんだろうなという気持ちから10元ほどの寄付を小さな入れ物に投げ入れたのでした。

 その同じ子供が今度は40歳代の目の見えないお父さんらしき人と夜の街にいたというわけです。地方から出てきたストリートパフォーマー一家.....。そこへ警官が一人やってきて注意をしようということになった時、高級ブランドに身を包んだハイヒールの女性が物陰からサッと出てきて、子供を抱きかかえ、笛を吹いていた男性に大声で注意を呼びかけて走り去っていきました。なんとも異様な雰囲気。中国では警察に捕まったらきっと大変だったのでしょう。

 日本に帰ってきて今考えるとあれはどうも親子じゃない。物陰から走り寄ってきた女性は妻じゃない。きっと彼女はそのビジネスのマネージャーであり、もしかしたら立場も強く、搾取する側の人間だったかもしれない。子供とおじいさんの胡弓弾きと目の見えない笛を吹いた男性もみんなそのビジネスのスタッフ仲間だったんだろうという気がしてきました。日本に帰ってきて本を読んでいて、それらしきビジネスがあるということが書いてあり「なるほど」と思ったわけです。

 観光客目当てのビジネスなのでしょうが、中国人は誰一人として目もくれず、お金もあげない理由がわかったような気がしました。あの小さな子は日替わりでパートナーを変え、あそこに座っているのでしょう。今思い出しても中秋の名月と美しい笛の音、お父さんの膝の上で眠る子供の姿がいじらしく、笛の音にマッチしてもの悲しく思い出されます。

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