私の友人で早川さんという友達がいます。もう15年も家族ぐるみのおつきあいになりますが、我が家の子供達3人が小学校の頃、北海道の夏休みを楽しんだ時に早川さんの子供達二人といっしょに白老で3週間ほど暮らし、とても楽しい思い出になっています。

「一休そば」は早川さん夫婦がゼロからスタートした初代の本物のおそば屋さんでした。その頃、大変流行っていてドライブインとして苫小牧や白老から来るファンが多く、大きな店構え、そして美人の若女将の早川夫人が切り盛りする姿がとても印象的でした。ご主人はなんといっても職人肌の方でそばも北海道産しか使わない。つゆも秘伝のつゆを東京中のそば屋を食べ歩き工夫に工夫を重ねた特製のものを作っているということでした。
そばのつゆはそばの本を読むと必ず出てきますが、「かえし」と「だし」を合わせて作るのがそばつゆです。
「かえし」はしょうゆ、砂糖、みりんから作り、しょうゆを加熱する「本がえし」、加熱しない「生がえし」があります。かつおぶしからだしを引きますが、このかつお節も全国走り回って一番すばらしいかつお節を見つけてくるのがプロのこだわりです。かえしとだしを合わせ何日か何週間か寝かせてはじめてそばつゆができるとはじめて知りました。
一休そばでは確かその当時からその日に引いてその日に作ったそばしか使っていないし、かつお節もその日に削り機で削ったものを使っていました。もりつゆは辛め、かけつゆは甘めで汁も二種類あります。私はそばマニアではなかったのですが、そのときに早川さん直伝のそばのゆで方を教わりました。大きななべを二つ沸騰させ、そばは最大で沸騰する大鍋に二つ以上は入れてはいけない。途中、一度水を差し、それが吹き上げてきたところでぴったり2分15秒でゆで上げる。二つゆでるのは一つよりも成功しない確率が高いのはそれだけそばのゆで時間が長くなるためでしょう。
二つ目の大鍋の沸騰したお湯は次のそばをゆでるためのものです。もちろん、2分15秒たったそばはできるだけ冷たい水でさっとぬめりを落とすように洗い、きっちりと水切りをしてできあがり。しかも30秒以内に食べ始めないとそばがのびる。こう考えると5人家族でそばを5人分ゆでるというのは果てしなく成功率が低いことだとそのとき思ったものです。大鍋に湯だったお湯が2鍋でも足りない。しかも五人全員が同時に食べはじめることはできないからです。
それ以来、そばを家で食べることはあきらめて外で食べることにしています。一休そばの厨房でこのきっちり2分15秒を守った作り方を観察していましたが、スタッフがこの2分15秒を逃して、5秒か10秒でもゆですぎたそばはお客様に出さず、その場で惜しげもなく捨ててしまうのには驚かされました。日本人の作り出すシンプルな料理ほど逆に厳しさを求められるものだというのはその時に痛感させられたものでした。
今、代替わりして息子さん達3人がこのたび東京中の最も優れたそばを食べ歩き、「そば研修」をするのでおいしいお店をなんとか紹介してほしいといわれ、そばマニアでない私は田中康夫さんのサイトから彼がノミネートしたお店をこれなら一押しと5,6店舗紹介しました。
東京人のおいしいと思うそばは必ずしも北海道でおいしいかどうかはわかりませんが...。そして、お昼に食べるそばと酒のあとで食べるそばとでもかなりの差があると思うのですが。
よくラーメンでは酒のあとに食べるラーメンほど塩辛い傾向があり、銀座界隈のラーメンやさんで流行っているお店に行くと「これって塩辛すぎない?塩味きつくない?」と首をひねるような味もあります。これは酒を飲んで味覚が麻痺するためでしょう。であれば、お昼にメインディッシュで食べるそばより、夜流行っているお店平均予算が一万円を超えるようなお店は意外とつゆが辛いんじゃないのかなという気がしますが、いかがなものでしょうか。
いずれにしても東京で「そば研修」をしたあとの彼らの感想をぜひ聞いてみたいものだと思います。早川さん一家のそして、一休そばの大発展を期待しています。どうぞ苫小牧に行ったら一休そば本店にお出かけください。
◆有限会社一休そば総本店
http://www.dotown.jp/area/07/0200/0709000129.html
◆田中康夫のペログリ日記