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健康都市プロジェクト

 ヨーロッパで始まった、健康都市プロジェクトというものがあって、この10年の間に、世界の1000以上の都市に拡がり、「公衆衛生の新しい波」と言われています。 

1996年に東京で都市健康プロジェクトについてのシンポジウムを開いて、私はそのときに司会をして、ヨーロッパの実状をWHOの担当者に話をしてもらったことがあります。
健康都市プロジェクトは、健康の問題をこれまでのように、保健医療の分野の担当者だけで解決しようとするのではなく、市民グループが計画の最初の段階から参加していることが第一の特徴です。また、保健医療だけでなく、教育、都市計画など様々な部門の行政、民間の専門家が協力して取り組んでいることが第二の特徴となっています。
例えば、デンマークのホーセン市という街では、健康都市プロジェクトに一般市民も参加できるようにしました。そのために、健康問題の現状分析をしたり、事業の計画立案をしたりというプロジェクトの事務所を、市役所から向かい側のビルの1階に移して、しかもそれを「ホーセン健康都市ショップ」という店の形にして、だれでも立ち寄れるようにしました。そこで市民は情報を得たり、会議を開いたりできるというわけです。この他にも様々な都市で市民が主体となって、街の緑化、女性や子どもの健康、老人介護、エイズ、麻薬といった健康問題に取り組んでいます。
 こうした、ヨーロッパでの新しい公衆衛生活動の動きをみていると、歴史の積み重ねということを感じます。ヨーロッパの公衆衛生活動は、労働階級の衛生状態をなんとかしなくてはならないということがきっかけとなって、19世紀にイギリスで始まっているのです。イギリスの公衆衛生は、住民自治ということが基盤にあって、住宅政策と環境対策が中心です。つまり街づくりと健康づくりが一体となっているわけです。一方、日本の公衆衛生は、明治時代に伝染病を予防するための取り締まり本位の行政から始まったという歴史があります。このころに、伝染病患者を担架で運んでいる絵を見ますと警察官が運んでいます。このころの伝染病対策、公衆衛生の担い手は警察だったのです。
 高齢者に戦前の伝染病の話を聞くと、あの地区のあの家は、伝染病患者がでて交通遮断になったということを未だに覚えている人がいます。伝染病対策は、お上が有無をいわさずに実施する怖いものだという記憶が未だに残っているのです。戦後日本でも、行政と住民が協力して寄生虫や伝染病予防、健康状態の向上に、相当な実績をあげてきたとはいえ、上意下達の行政の体質が、残念ながら、いまでも残っています。
 そして、最近になって公衆衛生、健康づくりの政策で扱うべき問題が、成人病に加えて、エイズ、地球環境、高齢化の問題に移っていくにつれて、これまでの古い体制では、なかなか対応しきれなくなくなっているといえます。
市民グループが、計画の最初の段階から参加する。また、保健医療だけでなく、教育など様々な部門の行政、民間の専門家が協力して取り組んでいくということは日本の感染症対策、公衆衛生の推進にとっても参考になると思います。

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