haru.

映画の作り方

菅原:CGって本当に大変でしょ?

山崎:そうなんですよ。さっきの話を聞いてて、本当に耳が痛いなと思ったんですけど、遅寝遅起でコンビニ食や乱食っていうんですか?まぁ、カップラーメンはそんなには食べてないですけどやっぱりコンビニ食が多いですね。食事しにいく時間がもったいなくなっちゃって「おなかすいたんでコンビニいってきます」って言ってみんな御弁当買って来るんですよ。まぁ、最近近くにお弁当屋さんが出来たんで、少し食事の質が上がりましたけど、基本的には、さっき言ってた悪い例の中にどんどんはまっていきますね。みんな夜中とか始発、ひどい時は、翌日お昼までやるって感じで、本当にダメダメの生活ですよ。


菅原:そういう状況で集中力とテンションをキープしつつ、質を最高に!という監督の要求するラインを達成しなくちゃいけないんですよね?ダメ出しとかもあるでしょ?

山崎:ありますよ。最近はスタッフの方がだんだん偉くなってきちゃって、自分でダメ出しするんですよ。「一応見せますけど、これまだ不本意な物ですから」って言われて、僕が「いいじゃんこれで!」って言ったら、「いや、僕はまだ満足できません」っていったりするんですよね。
あと、一緒にやってる社内のプロデューサーとかが、「監督、これでいいんですか?」とかも言いますね。だから、わりと自分たちでハードル上げてるみたいな感じがありますよ。

菅原:いい傾向ですね。

山崎:いいんだか悪いんだかですよ(笑)。

菅原:でもお金との戦いでもあり、時間との戦いでもあり、そのパーフェクトを狙うと言う。そういうものの三つ巴でしょ?

山崎:そうですね。パーフェクトっていう捉え方で言うと、本当のパーフェクトを目指しちゃうと、全員その1カット作って終わりってことになっちゃうんですよ。やっぱりブドマリってのがあって、全部、ある程度の基準にしたいんですよね。その基準をどこに設けるかっていうのがすごく難しいです。例えば、最初OKしたカットってのは、全体を通してみると、クオリティが低かったりするんですよ。そうすると、一度OKしたのに、またそれをやり直してもらわなくちゃいけなかったりしますし、全体のレベルをある高い位置に揃えなきゃいけないことがものすごく難しいです。

菅原:やっぱり、やってるうちに皆さんも上達するから、非常にクオリティが後半ガンガン上がってきたりもするんですか?

山崎:そうなんですよ。そういうこと無いようにはしてるんですけど、でもやっぱりノウハウが分かってくると、「あ、こうやればいいんだ!」って言うのを分かってきたとたんに、いいのが出来てくるんですよね。そうすると「OK出したんだけどさー」ってなってくるわけなんですよ。
それを見てしまうと、やっぱりどうしてもカットと比べるとレベルが低かったりして、もうちょっと何とかしないとって・・・。あと、締め切りがあるから、時間の作り方もすごく難しいんですよ。初めて上演する日から逆算して締め切りがあって、その締め切りまでキツキツにスケジュールを組んじゃうと、バラバラになっちゃうんですよね。最初の方は質が低いし、だんだん後半良くなってくるし、最後急いでやると、またレベル低くなったりするし。だから僕が常に気をつけてるのは、やり直しを出来るっていうのは幸せなことなんだから、やり直しの時間を取るんです。
だから、最後の一週間は、やり直しでどんどん良くなる週を設定しといて、その前に必ず終わらせるようにするんですよ。全部やってって終わったところで、全体を眺めてみて、みんなで「あれが悪い、これが悪い」とか、「もうちょっとここやれば良くなる」とかは、一度経験してきてることなんで、そこでもうちょっとプラスって言うのは割と簡単にできるんですよ。でも、そのやり直しを出来る一週間を捻出するのが大変ですね。やっぱり、甘えちゃうと一週間なんてあっという間に、過ぎてしまいますからね。その一週間をなんとか死守するってのがすごく大変です。

菅原:あの映画を一回観ただけじゃほんとにもったいないですね。一回目は演技を見て、ストーリーで泣いて、笑って、二回目はCG作家としての山崎監督の力量が発揮されてるがゆえに、私たちがエンターテイメントとして、すごく楽しいっていう部分がすごくいっぱいありますよね。

山崎:そうですね。でもね、そこはいいんですよ。そこは放っといてもらって(笑)。多分、今回の仕事に関しては「こんな事あったんだね〜」とか、タイムマシーンで30年代に行ったって感覚になってほしかったんですよ。そういう事が僕らの一番の到達点なんで。そういう意味で言うと、表に出てくるCGじゃなく、ほんとは映ってなきゃいけないんだけど、資料不足とかで映ってないものを、CGでフォローしたって感じなんですよね。だからCGワークはCGが好きな人がそれに注目して見て頂ければ良くて、映画を楽しんでいただければそれで、今回の仕事に関しては、僕らは満足です。

菅原:子供たちが都電に乗って行きますよね。ちんちん電車に乗ってずーっと行くんだけど、あれって、どっからCGなんですか?すごくナチュラルで分からないんですよね。

山崎:僕も分かんなくなっちゃいましたね(笑)。

菅原:そうですか。でも途中からCGなんでしょ?

山崎:そうですね。この前DVDを作ってて、CGを入れる前の映像と、CGを入れた後の映像を比較するコンテンツを作ったんですよ。そうしたら、自分らでびっくりしましたね。「あ、ここCGだっけ?」って。

菅原:えー、忘れてらっしゃるんですか?

山崎:ここの2・3軒先までセットがあったような気がしたんですけどもうそこから
さっぱりCGだったりして、「あー、大したもんだ!」って・・・。

菅原:どっからCGかわかんなくて、ほんとにナチュラルですよね。実は私、映画好きなん
で、ゾルゲイも見たんですね。その時は幕に映像がペタって貼り付けてるみたいに見えたんですけど、今回はどっからCGなのか全然わかんないっていうのがとてもすごいなって思いましたけどね。

山崎:ゾルゲイは研究させていただきましたね。ゾルゲイはね、最初の時には「ゾルゲイなんてさ」なんて言ってたんですよ。「三丁目の夕日」を作る時に、出資してくださる方とか、役者さんとかに「三丁目の夕日」って映画やりましょうって言っても地味じゃないですか…。だから映像がないと、俺たちがやりたいものは理解してもらえないだろうなって思ってデモリエルを作ったんですけどね。その時はリターナー作った後だし、「ゾルゲイなんて簡単に乗り越えられるよ」、
「ゾルゲイなんて全然大丈夫ですよ。」なんてCGさんも言ってたし、僕も「ゾルゲイなんてねー」なんて言いながら作ったら、全然ゾルゲイよりもレベルの低いものが出来ちゃって!!それで、みんなパニックになっちゃって、「どうすんだよ!」って事になるじゃないですか。もうプロデューサーに言っちゃったわけですからね。「ゾルゲイなんて」って言ってたら、全然ゾルゲイよりダメなものができちゃって、とにかく、すごいパニックになりましたね。やっぱ、難しいんですよ。昭和の時代っていうものを映像の中で再現するっていうのは。で、ゾルゲイはものすごい徹底的に研究しましたね。ゾルゲイの関係者の方いらっしゃらないですよね?(笑)

菅原:いるかも。

山崎:ていうかスタッフも少しダブったりしてたんですけど、ゾルゲイで何が問題かっていうのをすごく徹底的に研究して、そうすると、CGに頼りすぎてるとか、地面が映ってない。地面が映ってないと、ちょっとクオリティが低いだけで、どうしても人って背景が書割りに見えちゃうんですよ。

菅原:歌舞伎みたいな感じですね。前に役者さんが居て、後ろに幕があるみたいなね。

山崎:そうそう。緞帳が下がってるみたいな感じになっちゃうんで、絶対地面を入れよ
う!地面だけを作ろう!としたんです。後ろはブルーにすれば、なんとかなるから、その手前はちゃんと地面作って、人が地面に立ってるっていう実在感を出そう!とかね。だから、ずいぶんゾルゲイ様のおかげでいろいろと研究させていただきましたよ。

菅原:やっぱり、映画のハードルっていうのは、どんなことでもそうでしょうけど、一
難去ってまた一難。それの連続の中で、最後まで頑張ってみんなで力を合わせると、すっごいのになるわけですね。

山崎:そうですね。気持ち論でいうと、ハードルがたくさんあって、それを乗り越えたときの方が、ものすごく良いのが出来る感じがしますね。お金があってもダメなんですよ。お金は要るんだけどお金があるということだけでは映画って作れなくて、どれだけ目指そうと思うところまでにハードルがたくさんあって、それをどうやってとんちで乗り越えたか。そのとんち力っていいますか、知恵の力ですね。知恵の力でそれを乗り越えていく事が映画を輝かせるわけですよ。そこを放棄しちゃうと、「まぁ、こういう事でいいんじゃない?」ってやっていくと、その辺自体のパワーが全然無くなっていっちゃうんですよ。そういう意味では「Always」は最初っからみんなが頭抱えてた企画なんで、知恵の力がすごい注ぎ込まれてますね。

菅原:知恵を出されるのは、皆が一緒になって知恵を出すんですか?

山崎:そうですね。僕は基本的には裸の王様になりたくないんで、ものすごい突っ込まれやすい体制をキープしてるんですよ。だから本当に下っ端なやつが「監督、あれってあれじゃないですか?」って言うのを、「おお!いい事いってくれた!!」っていう体制だけは守ろうと思ってて。つまり巨匠になって、偉くなっちゃうと、みんなが思ったことを言えなくなるじゃないですか。
でも、一番下っ端の人って、観客にものすごい近いんですよ。僕らは作ってる方なんで、見えなくなってる事ってすごくたくさんあるんですよね。だから、出来るだけそういう人たちが、「俺のアイディア採用されちゃった!」みたいなことが成立するような現場を作ろうという、それだけはすごく意識してやっていますね。こういう事っていいことだと思うんですよ。監督って、偉くないんですよ。所詮、監督がやってる事って、後ろからダメ出しとか、なんだかんだ言ってるだけなんでね。だから、偉いんじゃなくて、ただ、作品の舵を握ってるだけだから、そこは勘違いしないようにしようと思ってて、出来るだけいろんな人から突っ込まれやすく、意見とかアイディアある人はそれを自分に言ってくれやすい状況を作るように心がけてますけどね。

菅原:やっぱりそれがキャパなんですね。そういう風にいろんな人が言いやすい状態を作るっていうのはキャパが大きいっていうことでもありますよね。

山崎:キャパっていうか、一人の脳ミソで考えるよりたくさんの脳ミソで考えたほうが、絶対良い物にはなるって思うんですよ。判断するのは僕ですから、「お前何言ってんだよ」って言うのもできるし、「良いアイディアだ」って言って貰うこともできるし・・・。とにかく、出来上がった映画はもう監督のものですからね。(笑)

菅原:そうですね。(笑)

山崎:ちょうど、淳之介と茶川の関係ですよね。「お前らのアイディアなんかよう、みんな俺のもんなんだよ!」って感じですね(笑)。

菅原:最後に、これからどんなものをお作りになりたいんですか?

山崎:そうですね。三丁目をやってみて思ったのは過去に行くっていう事が意外に面白いと思ったんですよ。今日は僕、少し早めにきて、この上の博物館見てきましたけど、江戸とかも面白いですよねぇ。明治時代とかも面白くて、町のミニチュアみたいなのがあったんですけど、「うわ!この絵だけでも映画になる!」ってシーンがいくつかあったんですよ。だから今度、意外に過去に戻るっていうのもやってみたい気がしますね。後、どうしても僕はCGとセットだって言われちゃうんで、どっかのチャンスで隙を見つけてCGなしの映画を作ってみたいです。

菅原:それもすごいですね。それはもう拍手したいです。っていうのは、CG抜きで、今回のキャスティングは最高ですし、ストーリーも「三丁目の夕日」からとられたんでしょうけど全く別物ですよね。

山崎:まぁ、原作はすばらしいものがあったんで、その上にのってるわけですけど…。

菅原:だからそういうことも野心的に試みられて、すごく素敵ですね。

山崎:「いや、らしくないだろ!CG無かったら意味ないじゃないかよ」って言われると思いますけど、そこを何とか上手いことやってみたいですね。「俺アカデミー賞監督ですし」とか言っちゃって、自分の意見通そうかな。(笑)でも、全スタッフがアカデミー賞ですから、「いや、俺もアカデミー賞プロデューサーだけど」って言われちゃいますね。(笑)

菅原:ハハハ!いいですね。何かとっても楽しくお話を聞いているうちに、あっという間に時間がきてしまいました。まだまだお話を続けていきたい気持ちなんですけど、今日は本当にありがとうございました。

山崎:ありがとうございました。

菅原:山崎監督41歳ですけど、心は子供のピュアな心を持っていらっしゃって、そういう風な素敵な日本人の若者の代表!出身は長野県の松本。松本は本当に素敵なところなんですよねぁ。
今日は、最後に皆さんと一緒に一曲!日本人を作る食育ですから、日本の心っていうのを一曲の歌に託して皆さんと一緒に歌いたいと思います(曲:古里)。古里のある山崎監督が、古里のいろんな子供時代の体験を全部自分の中で綺麗に消化されて、今の作品が出来てる、そんなイメージがしました。皆さんにも一人一人、それぞれの思い出の古里があると思います。古里と、そこに出てくる郷土の料理っていうのは、切っても切り離せないものですし、そういうものを次の世代に伝えられたら素晴らしいですね。もう最後ですから、大きな声で立ってお別れの歌を歌ってそのまま立ってるまま帰られたら早いかと思いますので。(笑)じゃあ、大きな声で一緒に歌ってみましょう!

菅原:今日は本当に長い時間ありがとうございました。山崎監督本当もありがとうございました。

山崎:ありがとうございました!

菅原:とても楽しく、私もいろいろ勉強させていただきました。これからのご活躍を心からご期待をしております。どうもありがとうございました。どうもみなさん、今日は本当にありがとうございました。来年またお目にかかりたいと思います。ありがとうございました!

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